我々はショウジョウバエから2つのNR(dNR)遺伝子、dNR1、dNR2を単離し、これまで以下の事を明らかにしてきた。 1)dNR1のMg^<2+>ブロックの感受性部位のアミノ酸はほ乳類のNRと同じN(アスパラギン)だったのに対し、dNRのMg^<2+>ブロックの感受性部位は、Mg^<2+>ブロックの存在しないAMPA受容体と同じQ(グルタミン)だった。 2)ショウジョウバエの培養細胞であるシュナイダー細胞、またはアフリカツメガエル卵母細胞にdNR1、dNR2を発現させ、電気生理学的な手法によりdNRを調べたところ、R1、dNR2の2つで構成されるチャネルはNMDA、グルタミン酸、アスパラギン酸で活性化された。また、ショウジョウバエの生理学な細胞外Mg^<2+>濃度(20mM)において電流電圧特性を調べたところ、ほ乳類のNRと同様のMg^<2+>ブロックが見られた。 3)米国のXiaらとの共同研究で、dNR1のanti-sense RNAを任意に誘導できるトランスジェニックフライを用いて匂い学習の行動解析を行ったところ、anti-sense RNAを誘導したハエは初期学習には異常を示さず、タンパク合成依存性の長期記憶に異常が見られた。このことからdNRが長期記憶に主たる役割を持つことを見いだした。
|