シナプス可塑性におけるカルモデュリンキナーゼの動的な機能発現の場の可視化

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15700269
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 阪上 洋行 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90261528)
• キーワード: カルシウム / プロテインキナーゼ / 中枢神経

研究概要

カルモデュリンキナーゼ(CaMK)は、神経細胞のカルシウム情報伝達機構の中心的なシグナル経路を構成しているタンパク質リシ酸化酵素である。本研究では、CaMKの細胞内局在を形態学的に明確にし、その機能発現の場を明らかにすることを目的として企画し以下の研究成果をあげ、J.Neurochem.に報告した。
1 CaMKIγの新たなアイソフォームの構造決定と酵素学的性質:CaMKIγの同一遺伝子からスプライスの相違により生じる2つのアイソフオーム(CaMKIγ1,CaMKIγ2)の単離をPCR法により成功し、その一次構造を決定した。その結果、CaMKIγは、476アミノ酸残基、推定分子量53kDaよりなり、一方、CaMKIγ2は、カルモデュリン結合部位を欠落した377アミノ酸基、推定分子量43kDaよりなることが判明した。また、酵素学的な性質を検討した結果、CaMKIγ1の活性化は、CaMKKにより制御されていることは明らかになった。
2 CaMKIγの脳内遺伝子発現と細胞内局在の解明:In situ hybridization法によりCaMKIγの神経系における遺伝子発現局在を検討した結果、CaMKIγは、松果体、視床下部の腹内側核、嗅球、海馬などの一部の神経領域に際立った強い発現を示すことが明らかになり、他のCaMKの発現局在と異なり、CaMKIγは、これらの神経細胞において特異な機能に関与することが示唆された。また、初代海馬神経培養細胞CaMKIγ1、2を発現させて、その細胞内局在を検討した結果、CaMKIγの両分子は、神経細胞の細胞体牟および突起の細胞質に局在することより、本酵素が、細胞質で機能していることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Kitanaka N.et al.: "Specific localization of epidermal-type fatty acid biding protein in dendritic cells of splenic white pulp"Histochem.Cell.Biol.. 120(6). 465-473 (2003)
• [文献書誌] Nishi N.et al.: "Coexpression of junctophilin type 3 and type 4 in brain"Mol.Brain Res.. 118(1-2). 102-110 (2003)
• [文献書誌] Kobayashi, T.et al.: "Structural and functional characterization of mouse glutamate decarboxylase 67 gene promoter"Biochim.Biophys.Acta.. 1628(3). 156-168 (2003)
• [文献書誌] Abdelwahab S.A.et al.: "Localization of brain-type fatty acid-binding protein in Kupffer cells of mice and its transient decrease in response to lipopolysaccharide"Histochem Cell Biol.. 119(6). 469-475 (2003)
• [文献書誌] Nishimura H.et al.: "Cloning, characterization and expression of two alternatively splicing isoforms of Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase I gamma in the rat brain"J.Neurochem.. 85(5). 1216-1227 (2003)
• [文献書誌] Sakagami H.et al.: "Somatodendritic localization of the mRNA for EFA6A, a guanine nucleotide exchange protein for ARF6, in rat hippocampus and its involvement in dendritic formation"Eur.J.Neurosci.. in press. (2004)