研究概要 |
今年度の本研究では、ガンマセクレターゼによるガンマ切断のイプシロン切断依存性を検証するため、予めガンマ切断部位からはじまるAPPカルボキシル末断片(CTF41-99)をCHO細胞に発現させて、イプシロン切断が起こるか否か検討した。その結果、細胞内からγCTFと伺じ移動度の断片が検出され、質量分析の結果CTF50-99であることがわかった。しかし、ガンマセクレターゼ特異的阻害剤(L-685,458)を細胞に処理しCTF50-99の検出を試みると、細胞は処理にも関わらずCTF50-99を産生することがわかった。このことはCTF41-99を発現させて得られたCTF50-99はガンマセクレターゼとは別の機構で生じていることを示し、ガンマセクレターゼによるガンマ切断のイプシロン切断依存性を反証するには到らなかった。以上の結果と昨年の成果を含めた論文がBiochemistry誌に受理された。 膜貫通部分の途中までを含むAPPのカルボキシル末端断片(CTF1-51)を細胞に発現させると、Aβ42が顕著に増加しAβ40が減少する。このCTF1-51を発現する細胞をAβ42の産生モデルとし、様々な条件でAβの産生能を調査した。まず、この細胞の膜フラクションを様々な界面活性剤で可溶化し、酵素活性(Aβ産生能)を測定した。通常のCTF1-99を発現する細胞の膜フラクションはDIGITONINで可溶化しても酵素活性を有することはないが、CTF1-51を発現する細胞の場合では酵素活性を有していた。また、産生されるAβ42の割合は依然高いままであった。一方、Blue Native PAGEにより可溶化フラクションを展開し、抗Nicastrin抗体でガンマセクレターゼ複合体を検出したところ、分子量44万に加えて30万〜25万付近にもバンドを検出した。通常のCTF1-99を発現する細胞の可溶化フラクションでは分子量44万のバンドのみ検出されることから、30万〜25万付近に現れるバンドはAβ42の産生に特異的なものと考えられる。
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