前年度に作成した人工DNA、すなわちノシセプチン遺伝子のプロモーター部位にコレラトキシンBサブユニットを連結してノシセプチン産生細胞に導入された場合のみレポーター遺伝子であるコレラトキシンBサブユニットを発現する人工DNAを、複数のラットの下丘にエレクトロポレーション法で導入した。標本は固定されて免疫組織化学的に解析され、コレラトキシンBサブユニットの免疫活性について下丘の神経細胞に明瞭な陽性像を得るに至った。また、コレラトキシンBサブユニットとノシセプチンおよびGABAとの単一細胞での共存も確認された。遺伝子導入において一定の成果が得られたと判断されたため、以上の内容を以って解剖学会および聴覚研究会において発表を行い、また日本音響学会聴覚研究会資料に論文として掲載された。 さらにまた一部の人工DNAを導入したラット個体からえられた標本について下丘全体を連続切片として免疫組織化学的染色を行うことによる単一神経細胞の形態解析を試みたが、正確な形態解析のためには標識されてくる細胞数が多すぎる等の改善を要すべき点があることが明らかになった。これについては投与DNA量などの条件を変化させて適した条件を検索中である。 また、エレクトロポレーション法以外の遺伝子導入法による発現の可能性を探るべく、当研究室で開発中のキトサン-PLLA微細粒子による遺伝子導入を試みたが、現在のところ遺伝子発現を検出しておらず条件を検討中である。
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