本年度は前年度に引き続き、マウス海馬、大脳皮質の形態学的、神経化学的性質の研究を進めた。 1)逆行性、順行性のトレーサーに免疫組織化学を組み合わせて、マウスの皮質線条体路の解析を行った。まず、逆行性のトレーサーであるFluorogoldを線条体に注入し、カルシウム結合蛋白であるParvalbuminが、線条体に投射している皮質ニューロンの一部に発現していることを明らかにした。これらのParvalbumin陽性の皮質投射ニューロンは、主にretrosplenial cortexとsomatosensory cortexのLayer Vに分布していた。Parvalbuminの染色性は、投射ニューロンの方が、非投射ニューロンよりも顕著に弱かった。Fluorogoldで逆行性に標識されたParvalbumin陽性投射ニューロンの一部は、明確なapical dendriteを備えていることから、錐体ニューロンであることが示唆された。次に、免疫蛍光多重染色を用いて、逆行性に標識された線条体に投射する皮質ニューロンの神経化学的性質の解析を行った。これにより、Parvalbumin陽性皮質投射ニューロンの多くはglutamic acid decarboxylase (GAD)陰性であるが、一部はGAD陽性であることを明らかにした。さらに、順行性のトレーサーであるPHA-Lをsomatosensory cortexに注入し、線条体におけるParvalbumin陽性軸索終末の解析を行った。多くのParvalbumin陽性軸索終末がvesicular glutamate transporter-1陽性であり、グルタミン酸作動性であると考えられたが、少数のGAD陽性の軸索終末が認められた。これらにより、従来はグルタミン酸作動性のみと考えられてきた皮質線条体路に、GABA作動性ニューロンが含まれており、それらはParvalbumin陽性ことを初めて明らかにした。 2)海馬や海馬台における電位依存性K channel (Kv4.2)のsubcellular localizationを解析し、シナプス入力に選択性のclusteringが認められることを発見した。この解析は現在も継続中である。
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