研究概要 |
炎症性サイトカインによる神経細胞死誘導の機能的意義については不明の点が多い.我々はinterleukin-1(IL-1)およびtumor necrosis factor α(TNFα)の神経細胞死誘導とその細胞死の機構を解明することを目的としてそれぞれのサイトカインおよびそのレセプターの一過性局所脳虚血(tMCAO)時による局在をタンパク,遺伝子レベルで調べた.さらに,遺伝子欠損マウスを用いて脳虚血実験を行い脳梗塞の比較および神経細胞死誘導の機構を機能形態学的に明らかにした. tMCAO後,IL-1βの遺伝子発現は6時間後に上昇し,タンパクは24時間後よりマイクログリア/マクロファージに一致して免疫陽性細胞が観察された.一方,IL-1 receptorは神経細胞と血管内皮で陽性細胞が観察された.TNFαの遺伝子発現は再潅流直後と24時間以降の2相性に見られた.その発現細胞は主に神経細胞であり,わずかにマイクログリアに陽性反応がみられた.一方,TNF receptorは早期では主に神経細胞に発現するが,時間の経過に伴いアストログリアの陽性比率が増加した.それぞれのKOマウスは有意に虚血性神経細胞死を抑制した.IL-1およびTNFαは虚血時に産生され神経細胞死誘導作用のあることが明らかとなった.IL-1の神経細胞死誘導作用にはNOおよびO_2^-産生による酸化毒性の関与を明らかにした.TNFα KOの細胞内シグナル分子への関与は細胞死の誘導に伴い変動するものの有意な差は認められていない. これらに関する発表を学術論文および学会にて報告した.
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