研究概要 |
Whole animalを用いた実験の準備実験として,エストロゲンおよび内分泌撹乱物質の標的となりうる部位もしくは分子の探索を行った. 培養海馬スライス標本においてエストロゲンおよび内分泌撹乱物質の標的が苔上線維-CA3シナプスであったことから,これらの化学物質のターゲット部位同定を試みた.培養海馬切片および培養歯状回切除海馬切片における後シナプスマーカーPSD95とDiIを用いた二重染色,歯状回,アンモン角各神経細胞の高純度単離培養におけるFM1-43を用いたシナプス活動の可視化により,エストロゲンによる苔上線維-CA3シナプス過形成におけるターゲットが歯状回顆粒細胞であることを明らかにした. 内分泌撹乱物質が脳内へ移行する際,神経細胞に到達する前にアストロサイト層を通過することをふまえ,エストロゲンおよび内分泌撹乱物質のアストロサイトに対する作用についても初代培養アストロサイトを用いて検討した.近年,アストロサイトは神経細胞間シナプス伝達において積極的な役割を果たしている可能性が示唆されているが,そのメカニズムの一つとして注目されている神経伝達物質グルタミン酸の取り込み能力に対する作用について検討した所,エストロゲンはアストロサイトの細胞膜上に存在するアルファタイプエストロゲン受容体を介してグルタミン酸取り込みを阻害するという,新規の作用を発見した.また,これらの作用に,アルファタイプ膜エストロゲン受容体→PI3K→Akt→NOS活性化によるNO産生という情報伝達カスケードが関与する可能性を見出した.
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