免疫系で見出されていた活性化シグナル伝達分子であるDAP12 (DNAX Activating Protein 12)が、統合失調症様の症状を呈すると共に若年性痴呆を必発して死に至る那須・ハコラ病の原因遺伝子であることが近年報告された。我々が独自に作製したDAP12遺伝子欠損マウスの組織学的解析から、視床中心性のミエリン塩基性タンパクの発現減少と視床領域のミエリン形成異常を観察した。一方、野生型においてオリゴデンドロサイトとミクログリアにDAP12の発現を確認し、DAP12はグリア細胞で機能し正常なミエリン形成に関与していると考えられた。そこでDAP12によるオリゴデンドロサイト機能制御の解析を計画した。 オリゴデンドロサイトにおけるDAP12の機能解析を進めるうえで、初代培養法でオリゴデンドロサイトの純粋な細胞集団を回収し機熊解析を行うことが困難なため、不死化を目的として作製された温度感受性SV40Tトランスジェニックマウス(SV40Tマウス)から生理機能を保持した野生型とPAP12欠損型のオリゴデンドロサイト細胞株の樹立を試みている。野生型SV40Tマウスの前脳を用いて混合グリア細胞を培養した後、振とう法により浮遊細胞をオリゴデンドロサイトとして回収したが増殖性の高い細胞株の樹立は困難であった。そこで神経前駆細胞として培養した細胞塊から分化誘導因子を添加してオリゴデンドロサイト誘導した。神経前駆細胞から誘導した細胞中にオリゴデンドロサイト様の形態を示す細胞を多数確認した。これらの細胞をMACSにて精製・回収し、長期培養、増殖能力とオリゴデントロサイトとしての性質を検討中である。
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