研究概要 |
アポトーシス阻害タンパク(Inhibitor of Apoptosis Protein : IAP)は種を越えて構造と機能がよく保存されているアポトーシス抑制因子である。ヒトIAPの一種であるXIAP, c-IAP1, c-IAP2はアポトーシスの実行に中心的な役割を担うCasPase-3,-7,-9を阻害し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患モデルマウスで観察される神経細胞死を含めた様々な細胞死を抑制する。我々は、XIAP結合タンパタ質としてHtrA2/Omiを同定した。HtrA2はミトコンドリア膜間腔に局在するセリンプロテアーゼで、細胞死誘導刺激により細胞質に放出され、XIAPを含むIAPに直接結合することにより、IAPの抗Caspase活性を阻害する。また、HtrA2はセリンプロテアーゼ活性依存的な細胞死誘導能を有しており、Caspase非依存的細胞死への関与が示唆されている。 我々は、HtrA2の生理機能を解明するために、HtrA2の基質タンパク質のスクリーニングを行い、IAP自体がHtrA2基質タンパク質であることを明らかにした。組換え型HtrA2により切断された組換え型XIAPは、最終的にはCaspase阻害活性を失うことから、HtrA2はIAPに結合するだけでなく、IAPの分解も促進し、IAPの細胞死抑制活性を阻害すると考えられた。また、HtrA2は未知の基質タンパク質を切断し、ミトコンドリア外膜の透過性を亢進させ、細胞死の進行を促進させることも見出した。引き続きスクリーニングを行い、数種類のHtrA2基質タンパク質の細胞死に対する影響を調べた結果、顕著な細胞死抑制能をもつ新規タンパク質Aを同定した。これらの結果から、HtrA2がいくつかの細胞死抑制因子を分解し、不活性化することにより細胞死を誘導する可能性が示唆された。
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