研究概要 |
短時間(数秒)で展開する神経細胞の情報変換に関わる分子因子の機能的役割を実時間で測定する新手法・新論理を発表した。材料には、嗅覚受容細胞を用い、その情報変換はcAMPによって仲介されていることが分かっている。通常、細胞の情報変換の機能というのは分子の役者が出そろったところで終了とされる。しかし、本研究では、更に情報変換に関わる各役者が、それぞれどのようを分子的役割を担っているのかを解明するという学問領域へのチャレンジを進めている。嗅細胞の情報変換は直径0.2ミクロンの微細構造体内(繊毛)で数秒の時間経過で展開する。その情報変換因子の時間経過を実時問で測定することは、これまでの常識では不可能であった。しかし今回我々は光活性分子(ケージド化合物)を定量的に利用して、これをより現実に近いものに近づけた。本研究の結果として、嗅繊毛内のアデニル酸シクラーゼの活性の時間経過、cAMP濃度の時間径過を推定し、信号の時間的増幅の分子、リガン強度に対する非線型増幅の過程がチャネルで行われている事を特定できた。ケージド化合物・バッチクランプ法とUV光量調節装置を組み合わせ、単離嗅細胞繊毛より得られた電流を記録、解析した。ケージド化合物とは、多くの場合、生理活性物質の分子に側鎖をつけることで生理活性を不活性化し、UV光によって側鎖をはずし、活性北させるものである。すならち、光によって細胞内や組織内の物質を自由に制御することが可能となる。本研究ではcAMP -cGMPのみを記述したが、、他ATR,-cGMPや伝達物質としてのグルタミン酸なども開発され、各方面の研究に使用されている。本研究ではバッチクランプ法などと組み合わせ、定量的なシステム解析に応用が可能となり、生体分子の機能的役割を調べるために、非常に有用な方法を確立したといえた。
|