本年度は、片眼遮蔽による眼優位性の可塑的変化を起こした場合に、(1)Cdk5が発達期視覚野の可塑性に必要であるのか、(2)可塑的変化を起こさせた時にCdk5活性が視覚野のどこでどのように変化するのか、(3)Cdk5阻害によりBDNFタンパク質量が変化しないか、の以上3点について調べた。 (1)臨界期の幼若動物(ラット)を用いて、麻酔、無菌条件下で大脳皮質一次視覚野にCdk5阻害剤を浸透圧ミニポンプを用いて持続注入する。48時間後に片眼を遮蔽し、さらに4日後に注入部位周辺から金属電極を用いて電気生理学的に記録を行うことにより眼優位牲の変化が阻害されるかを調べた。結果、Cdk5が発達期視覚野の可塑性に必要であることが明らかになりつつある。現在、実験数を増やすと共にブラインド実験にて確認中である。 (2)臨界期の幼若動物と臨界期を過ぎた成熟動物の片眼を遮蔽して24時間後に動物を潅流固定し視覚野を含む切片標本を作成する。さらに、リン酸化Cdk5抗体等を用いて免疫組織化学染色を調べた。結果、Cdk5の活性化が皮質の2・3層に多く、片眼遮蔽により遮蔽眼投射領域で減少することが明らかになりつつある、現在、さらに発達によりどう変化するのか(可塑性の見られる幼若期のみに変化が起こるのか)についても調べている(ウエスタンブロッティング法による結果も明らかになりつつある)。 (3)臨界期の幼若動物の一次視覚野にCdk5阻害剤2種類を浸透圧ミニポンプを用いて持続注入した。48時間後に視覚野を取り出し、2部位酵素免疫測定法を用いてBDNFタンパク質量を測定した。結果、Cdk5阻害剤による可塑性への効果がBDNF変化を伴わないことが明らかになった。
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