これまでにCdk5阻害によりBDNFタンパク質量は影響を受けないことが明らかとなったので、本年度は、片眼遮蔽による眼優位性の可塑的変化を起こした場合に、(1)Cdk5が発達期視覚野の可塑性に必要であるのか、(2)Cdk5活性が発達によりどのように変化するのか(臨界期に多いのか)、(3)成熟期においてCdk5活性阻害分子(Rho kinase)の阻害により可塑性を再生できるのか、の以上3点を明らかにすることを目的として実験をおこなった。 (1)臨界期の幼若動物を用いて、大脳皮質一次視覚野にCdk5阻害剤を浸透圧ミニポンプを用いて持続注入。24時間後に片眼を遮蔽し、さらに4日後に注入部位周辺から金属電極を用いて電気生理学的に記録を行うことにより眼優位性の変化が阻害されるかを調べた。結果、Cdk5が発達期視覚野の可塑性に必要であることが明らかとなった。 (2)臨界期を含む幼若期から成熟期まで様々な週齢の動物の一次視覚野を取り出し、ウエスタンブロッティング法を用いてCdk5活性の発達変化を調べた。ウエスタンブロッティング法は立ち上がり、実験をおこなっている最中であり、現在、nを追加中である。 (3)成熟動物を用いて、大脳皮質一次視覚野にCdk5活性阻害分子(Rho kinase)阻害剤を浸透圧ミニポンプを用いて持続注。24時間後に片眼を遮蔽し、さらに13日後に注入部位周辺から金属電極を用いて電気生理学的に記録を行うことにより眼優位性の変化がおこるようになるかを調べた。結果、Rho kinase阻害により成熟期に視覚野の可塑性を一部再生することができた。しかし、再生の程度が完全ではないので、現在、フォルスコリンによるPKA活性化とRho kinase阻害剤を併用することにより、成熟期に幼若期同様の完全な可塑性機能再生を試みているところである。
|