A2 (AII)アマクリン細胞は、光情報を杆体入力型双極細胞から錐体入力型双極細胞に伝える。AIIアマクリン細胞は電位依存性Na電流をもち、振幅15 mV程度の活動電位を発生することが報告されている。本年度は、Naチャネルの細胞内局在と、活動電位の役割(これは次年度以降も継続する)の解明を目標として研究を遂行し、以下のことが明らかになった。 マウス網膜スライス標本にホールセル・パッチクランプ法を適用し、記録電極から電流注入して活動電位を発生させると、発生頻度は電流注入量に依存して増加した。また、AIIアマクリン細胞に杆体入力型双極細胞の伝達物質(グルタミン酸)を投与すると、活動電位の発生頻度が濃度に依存して増加した。AIIアマクリン細胞内でグルタミン酸感受性が高い部分は、杆体入力型双極細胞のシナプス入力を受けることが形態学的に報告されている樹状突起先端部分であることが分かった。さらに、AIIアマクリン細胞が自発的に活動電位を発生する電位(約 -55 mV)に保持電位を設定し、杆体入力型双極細胞の樹状突起にグルタミン酸を投与する(網膜神経回路網内に人工的な暗闇を作り出す)と、AIIアマクリン細胞へのシナプス入力が減少し、活動電位発生が抑制された。以上のことから、AIIアマクリン細胞の活動電位が光刺激強度をコードしていることが示唆される。 また、Naチャネル阻害剤であるテトロドトキシンをAIIアマクリン細胞へ局所投与した結果、細胞体付近でNa電流密度が高いことがわかった。これらのことから、杆体入力型双極細胞から受けた伝達物質によってAIIアマクリン細胞の樹状突起先端部分で脱分極が起こり、これが細胞体付近に伝達された後に活動電位に変換されているかもしれない、ということが考えられる。今回得られたNaチャネルの局在と活動電位の役割との関連について、次年度以降も、継続して調べていく。
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