網膜のA2(AII)アマクリン細胞は、光情報を杆体双極細胞から錐体双極細胞に伝え、振幅15mV程度の活動電位を発生することが報告されている。本年度は、AIIアマクリン細胞の活動電位発生メカニズムの解明を目標として研究を遂行し、以下のことが明らかになった。 昨年度の研究結果から、AIIアマクリン細胞に電流注入して活動電位を発生させた場合、およびAIIアマクリン細胞の樹状突起に杆体双極細胞の伝達物質(グルタミン酸)を投与した場合、ともに強度(濃度)に応じて活動電位の発生頻度が増加することがわかっている。これら2つの実験において、平均膜電位と活動電位の発生頻度をプロットしBoltzmannの式でfittingしたところ、half-maximum frequencyを示す電位は両方とも約-50mVだった。活動電位の発生頻度のdynamic range (DR)をmaximum frequencyの5〜95%と仮定すると、DRの平均膜電位は-57〜-37mVとなり、生理的な範囲に充分入ることがわかった。また、AIIアマクリン細胞どうしのギャップ結合を薬理学的に切ると、少ない電流注入量でもmaxirnum frequencyを示した。これらのことから、AIIアマクリン細胞のギャップ結合には、過剰に流入してきたEPSCをshuntさせることで活動電位の発生頻度をDR内に収める役割があると考えられる。 昨年度の研究結果から、AIIアマクリン細胞のNa電流密度は細胞体付近が高いことがわかっている。細胞体付近の突起にはグリシンを放出する部位があるため、AIIアマクリン細胞の活動電位は効率的にグリシンを放出させる作用があることが考えられる。今後は、免疫組織学的手法と分子生物学的手法とを組み合わせながら、杆体経路におけるAIIアマクリン細胞の活動電位の機能解析について、継続して調べていく予定である。
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