平成15年度には、以下の二点について明らかにした。 1.上丘浅層ニューロンに発現するニコチン型アセチルコリン受容体(nAChR)のサブタイプと、その機能的役割を解析した。電気生理学的、薬理学的実験から、GABA作動性介在ニューロンはα7型と、α3β2型を発現することが明らかになった。一方、同じ受容体の活性化により、投射ニューロンへのGABA_A受容体を介した抑制がシナプス前性に促進されることが示唆された。上丘に軸索-軸索間シナプスが存在するという報告は無く、またコリン作動性の軸索終末が樹状突起に終止するという電顕所見があることから、上丘浅層におけるアセチルコリン系にはdendro-dendriticシナプス伝達を修飾する機能があると考えられる。 2.Wide field vertical (WFV) cellと呼ばれる投射ニューロンの特性を調べた。我々は、このニューロンがhyperpolarization-activated cation nonselective (HCN) current (I_h)を顕著に示すことを既に明らかにしていたが、今回新たにWFV cellはHCN channelのうち主にHCN1を樹状突起に発現することを示す結果を得た。他方、WFV cellではシナプス入力に応答して、まず樹状突起において活動電位が開始されることを示唆する結果を得た。I_hを抑制するとシナプス入力に対して発火に至る確率が減少し、発火までの潜時が延長された。このことからWFV cellにおいてHCN1は、樹状突起における活動電位の生成と伝播を調節することが示唆された。 以上に関して、共焦点レーザースキャン顕微鏡により、イオン感受性色素や電位感受性色素を用いて、樹状突起でのイオン動態や電位伝播の様子、またどのようなイオンチャネルが存在し、それが信号伝播にどう寄与するか今後検討する予定である。
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