研究概要 |
卵成熟や初期発生過程では,不活性な母性mRNAの翻訳がポリA鎖の付加により活性化されることなどから、時空間的な翻訳制御が重要な役割を果たしていると考えられている。また近年、父親のゲノム情報を卵子に受け渡すためだけに存在すると考えられてきた精子にも多くのRNAが存在することが報告され、"精子由来"RNAの胚発生への関与が示唆されている。しかしその胚発生過程での役割についてはまったく明らかにされていない。本研究では精子のもつマイクロRNAに着目し,それらの探索および解析により,"精子由来"RNAの役割を解明することを目的に研究を行った。 まずノザンブロット分析によりマイクロRNAを検出する系を確立した。卵巣,精巣,脳などのトータルRNAを15%の変性アクリルアミドゲルで電気泳動した後メンブランにトランスファーし,すでに報告されているマイクロRNA(mir-125bとlet-7c)に対するプローブで検出した結果,それらマイクロRNAが組織で発現していることが確認できた。次に単離したマイクロRNAの初期胚発生での機能を検討するときのために,細胞質型ポリAポリメラーゼである線虫GLD-2のマウスホモログを利用し,卵子でのRNAiの系を確立した。マウスGLD-2は卵子で発現しており,ノックダウンした卵子では卵成熟が途中で停止したことから,マウスGLD-2はマウス卵成熟過程でポリA鎖を伸長させることにより,タンパク質翻訳を促進する役割を担っていることが明らかになった。また,マウスGLD-2は初期発生過程でも発現していたことから,精子由来mRNAのポリA鎖を伸長する役割を持つ可能性も示唆された。ひきつづき精子由来RNAからマイクロRNAを単離し,胚発生での機能解析も行っていく予定である。
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