新規遺伝性腎がんラットであるNihonラットの腎がん発生の原因が、ヒトのBirt-Hogg-Dube症候群の原因遺伝子であるBHD遺伝子のラットホモログに生じたgerm line mutationであることが明らかとなった。ラットBhd遺伝子の全長cDNA構造の解析をRT-PCRおよび5'-、3'-RACEにより行った。ラットBhd産物(folliculin)は579アミノ酸残基からなり、ヒトとマウスにそれぞれ93%、97%の相同性を有していることがわかった。ラットBhd遺伝子の5'領域には、ヒトでは3つであった非翻訳エクソンを2つ認めた。さらにNihonラット由来の腎がん培養細胞を樹立し、この培養細胞株ならびに4匹のNihonラットから採取した腎がん11例に関してBhd遺伝子における遺伝子変異の解析を行った。その結果、腎がん11例中10例と上記培養細胞株全例においてBhd遺伝子領域のLOHを認め、さらにLOHを認めなかった腎がん1例においても、Bhd遺伝子の野生型アリルのエクソン6内にナンセンス変異を生じるG→Tへの塩基置換を認めた。以上からNihonラットの腎発がんの原因がBhd遺伝子におけるKnudsonの2nd hitにより生じることが確認された。 現在、野生型Bhd遺伝子を導入遺伝子に持つトランスジェニックNihonラットを樹立し、表現型の観察を行っている。また原因遺伝子産物であるfolliculinのN末ならびにC末に対する抗体作製を行った。特にC末に対する抗体はウェスタンブロットで良好な結果を得ており、約66kDaのfolliculinの特異的なバンドが検出されている。今後、この抗体を利用し、folliculinの機能解析を進める予定である。
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