本年度は卵子を用いたゲノムインプリンティングスクリーニング法の確立を行った。 最初にBisulfite処理を行ったゲノムDNAから、Peg1、Peg3、Snrpn、H19の4つのインプリンティング遺伝子をmultiplex PCR法によって増幅できる条件を設定した。上記4つの遺伝子PCR産物について、メチル化多型を認識する制限酵素を用いたCOBRA(Combined Bisulfite Restriction Analysis)法により、Peg1、Peg3、H19の3つの遺伝子はチミン置換型とシトシン非置換型のPCR産物間の増幅に偏向がないことを確認した。 次に上記3つの遺伝子PCR産物について制限酵素TagI認識メチル化多型サイトでのメチル化/非メチル化DNA量の相対値を、正常マウスの卵子10個〜30個からなるサンプル(N=96)と2細胞期胚5個からなるサンプル(N=47)について算出した。2細胞期胚を仮想ゲノムインプリンティング異常卵子と見立て、卵子と二細胞期胚サンプル間でのメチル化/非メチル化DNA量の相対値の分散を比較した。その結果、それぞれの遺伝子PCR産物について、卵子サンプル96個のうち、3サンプルが2細胞期胚47サンプルからなるメチル化/非メチル化DNA量の相対値の分布範囲中に含まれたのみであった。これら3つの卵子サンプルの各遺伝子産物についてsequencingを行った結果、TaqI認識サイト以外のCpG配列では正常卵子の示すメチル化パターンと同一であることを確認した。 以上のことから卵子でのゲノムインプリンティング機構に異常を示すmutantマウスを検出すべく、COBRA法とsequencing法を組み合わせたスクリーニング法の確立を行った。 既に2003年12月よりG3マウス卵子のゲノムインプリンティングスクリーニングを開始し、現在継続進行中である。
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