本研究では軟骨移植の臨床応用に向けてより効率的な軟骨移植組織作製を目的として、組織工学的手法を用いた再生軟骨作製に関わるマトリックスの検討を実際の臨床応用を視野に入れて検討を行った。注入型および3次元培養における軟骨組織再生の面から至適材料の検討を行い、PLC(ポリ乳酸-ε-カプロラクトン共重合体)などの生体内で分解可能なポリマーを選択した。軟骨細胞はマトリックスに播種し、1日培養後にヌードマウスの背部皮下に移植を行い、2週、4週後の組織をアルシャンブルー染色、基質アグリカン量、及び必要に応じてリアルタイムPCRでGDH(グリセロール脱水化酵素)をコントロールとして基質アグリカンmRNA発現レベルを中心とした軟骨マーカーを指標にそれぞれのマトリックスを評価した。MSC(Cambrex Bio Science Walkersville(米国、MD)より購入)の分化能を助けるために超音波処理は、ポリプロピレンチューブ中のペレット培養法を用いてTGF-β刺激で軟骨細胞に分化させたMSC(ヒト間葉幹細胞)について毎日20分間行った。 MSCからTGF-β刺激による軟骨細胞への分化は、超音波処理でTGF-β刺激のみに比べて約3倍の促進がみられた。ラット軟骨細胞について増殖、継代培養し、PLCを主体とするスキャフォルドに注入し、培養した結果では、hybrid-75PLCとコラーゲンと同じように良く接着し、その後の細胞増殖率はむしろ75PLCで最高になった。またヌードマウス皮下でのin vivoで4週後の軟骨再生の能力を検討したところコラーゲンスキャフォルドではその容積の半分の減少があったが、PLCのものは元の形を保ったままであり、軟骨組織の形成が見られた。 超音波刺激による間葉系幹細胞からの効率的培養法の確立に成功したこれらの良好な材料では、細胞毒性や異物反応が起こりにくく、細胞も中で生存していたことから、軟骨組織を作製する能力を持つことが予想された。
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