本研究におけるエアロゾルビーム形成にはハイドロキシアパタイト(HAp)超微粒子のエアロゾル化が必要である。エアロゾル化を実現するエアロゾルバイブレーションシステムは、上下振動撹拌をベースにしている。エアロゾルチャンバ内には粒径1μm以下の粒子とともに1μm以上の凝集粒子も存在する。上下振動撹拌速度の調整によって粒径の大きい粒子の浮遊をある程度制限することはできるが、粒径の大きい粒子は、1μm以下の粒子とともに加工チャンバに運ばれてしまう。粒径の大きい粒子が基板に衝突しても1μm以下の粒子の衝突時に生じる結合が生じないため強固な密着が得られない。そこで、粒径の大きい粒子を除去するためのフィルターを考案した。本フィルターでは、粒子の質量に依存した飛行軌道の違いを利用している。実験結果から粒径1μm以上の凝集粒子が本フィルターにより除去されていることが確認できた。 チタン基板上へのコーティング実験の結果を基にポリ乳酸基板へのビーム照射実験を行った。ビーム照射時間1分、ビーム出射ノズル基板間距離10mmに設定し、ビーム入射角度0°から80°まで10°間隔で変化させた。その結果、70°時において引っ掻き試験では剥離しない良好なHAp皮膜が形成されることが分かった。 大気下エアロゾルビーム加工装置の開発を行った。飛行する超微粒子の速度は、超微粒子を封入したエアロゾルチャンバと加工チャンバ間の圧力差によって生じるので、エアロゾルチャンバを加圧下にした。加圧エアロゾルチャンバは、重量であるため従来のエアロゾルバイブレーションシステムでは、上下振動撹拌ができない。そこで、モーターの回転による攪拌機能を付加した。加工チャンバ内において、付着しなかった粒子が浮遊し皮膜形成を妨げる可能性があった。そこで、浮遊微粒子を排除するために排気装置を加工チャンバに付加した。
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