磁気共鳴顕微鏡装置を用いて弾性率分布を高空間分解能に得ることができる磁気共鳴弾性画像(MRE:magnetic resonance elastography)撮影システムを開発することを目的として、弾性体内部に弾性波を発生させるための外部加振装置と、MR顕微鏡を制御するためのパルスシーケンスプログラムを作製し、これを用いた実験をした。 外部加振装置は、弾性体表面に対して周波数が数百Hz、振幅が十ミクロン程度の振動を加えることができ、強磁場下でMR信号収集時にノイズ源とならないで動作する必要がある。そこで今年度開発した外部加振装置では、撮影試料と近接する部分には非磁性体であるアクリルと竹を利用し、駆動部には圧電素子を利用した。 MRE撮影用パルスシーケンスプログラムは、正負の極性を交互に繰り返す傾斜磁場(振動増感傾斜磁場)と外部加振装置への制御信号を、標準的なスピンエコー法のパルスシーケンスに加えることで作成した。振動増感傾斜磁場の繰り返し回数や周波数は計測する試料に応じて複数種類用意した。 均一寒天ゲルと二層構造を持つ寒末ゲルを撮影対象に、開発した磁気共鳴弾性顕微鏡システムを利用した実験をした。弾性試料内部を伝わる剛性波の波長を1cm程度にするために外部振動周波数は200Hzとした。弾性体表面に接触させた状態での外部振動の振幅を計測したところ約15ミクロンであった。磁気共鳴弾性顕微鏡システムで測定した剛性率の定量性を確認するために、切り出した試料の剛性率が測定可能な動的粘弾性装置による計測値との比較をしたところ、両者での剛性率測定結果は良く一致した。また、二層寒天ゲルを対象とした実験によって巨視的な剛性率分布が得られるごとを確認した。
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