再生医工学において血管新生と心筋再生は中心的課題であり、生体内における相互関係の重要性は十分に認識されているが、技術的あるいは評価法の難しさから個々に研究されているのが現状である。本研究では冠微小循環と心筋の相互依存性増殖過程にスポットを当て、相互機能発達という観点から検討し、心機能発達上不可欠な統合的情報を得ることで生理学的な知見を通して再生医療にも貢献することを目的としている。 実験は、1)独自のCCDカメラを用いた新生児および胎児ラットの冠微小循環の可視化、2)大型放射光施設SPring-8によるアクチン・ミオシンのX線回折像解析によるクロスブリッジ発達過程の観察を行った。1)では、ペンシル型生体顕微鏡にて胎児及び新生児ラットの冠循環可視化を可能にした。この際に、心外膜側を覆う毛細管と心筋内の細動脈を焦点調節により同時に観察することが出来、壁張力が異なる心外膜側、心筋内、心内膜側微小循環の同時可視化の可能性が示された。また、細動脈レベルでは、成ラットにおいて枝状の分岐を呈するのと異なり、中洲状の分岐を有する血管を観察出来た。これは血管新生過程にあるものと考えられ、血流動態と血管の経時的形態変化を検討する予定である。2)では摘出全心臓を用いてアクチン・ミオシン二重六角格子によるX線回折像を観察した。出生直後はアクチン・ミオシンの配向が成ラットに比べて未熟であり、回折像を得ることが出来なかった。生後日数と共に配向が発達し、約二週間で成ラットと同じパターンの回折像を呈することが明らかになった。
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