本研究の目的は肺がん検診用マルチスライスCTから得られた低線量高分解能3次元CT画像を使って肺気腫に冒された肺から肺がんを検出するための手法を研究開発することである。高分解能3次元CT画像では肺気腫の細かな構造が描出できる。肺気腫は肺組織を壊す独特の特性があり必ず肺に孔が生じる。そこで孔に接した肺組織の辺縁性状やその関与形態を徹底的に解析し、肺の局所部分の特徴量から肺気腫の有無を識別する手法を研究開発する。この識別法は肺がんに対しても応用できるために現行の肺がん検出システムに肺気腫の特徴量を追加し、肺気腫が関与した領域とその特徴量を用いて肺がん検出システムを研究開発する。さらに、検診データを用いた実験を行い有効性の評価を行う。本年度は、以下2つについて実施した。 1.検診用高分解能3次元CT画像を用いた肺気腫の空間的特徴量の解析 肺がん検診で撮影された低線量高分解能CT画像のデータベース構築を行った。このデータを用いて専門医の指導によって肺気腫の領域抽出と進行度のデータベース化を行った。肺気腫の領域と正常肺の領域の2グループに分けて、辺縁性状やその関与形態を解析し、肺気腫の進行度とどのような関連があるかを調査した。 2.肺気腫の識別法の研究 肺組織と孔の空間的特徴量から肺気腫の有無およびその関与領域を識別する手法を研究開発した。ここでは正常肺と肺気腫の肺において肺の局所領域の形態や濃度に関する特徴量や孔に関する特徴量を調査して、肺気腫を検出する手法の開発を行った。
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