研究概要 |
腫瘍化に伴う遺伝子レベル、あるいは分子レベルでの変化が解き明かされるとともに新しい治療戦略が開発されてきた。本研究では遺伝子薬物を感熱性ポリマーであるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)と複合化し、外部からの熱刺激に応答してその薬理効果を可逆的に制御する新しい遺伝子薬剤を開発した。このアンチセンスDNAの3',5'両末端にNIPAAmを複合化したコンジュゲートはヌクレアーゼによる攻撃を完全に抑制することができる。本年度は、細胞抽出液を用いたin vitro転写・翻訳系においてインキュベーション温度を連続的に変化させ、複合体のアンチセンス効果を制御することを試みた。GFPをレポーター遺伝子として実験した結果、PNIPAAmの相転移温度以上(37℃)でインキュベートした場合、複合体を添加していないコンロール実験とほぼ同じ遺伝子発現のプロファイルが得られた。次いでインキュベーション温度を相転移温度以下(27℃)に下げると、GFPの発現は有意に抑制された。この実験結果から、複合体のアンチセンス効果はODN近傍のPNIPAAm鎖の状態に依存し、グロビュール状態から緩和されることによって、ODNが標的遺伝子にハイブリダイズできることが示唆された。またこのアンチセンス/PNIPAAm複合体は、細胞へも効果的に取り込まれることが確認されており、アンチセンス核酸の新しい機能制御法として有効であることが示された。
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