研究概要 |
血管内皮細胞は物理刺激であるせん断応力を細胞内へ伝達するメカニズムがあると考えられている.そして,一般に細胞膜上の受容体などの膜タンパクは細胞の外部刺激を内部へ伝達することが知られていることから,内皮細胞が外部刺激であるせん断応力を細胞内へ伝達する際にはこの細胞膜上のタンパクの挙動が重要であると考え,せん断応力の影響下での膜タンパクの運動を解析した. 実験にはヒト大動脈由来内皮細胞を用い,せん断応力の負荷には平行平板型の流路を使用した.また膜タンパクにはGPIアンカー型タンパク質であるCD59に着目しその運動を解析した.解析方法は,CD59の抗体を微小蛍光粒子に吸着させ,その後この蛍光粒子を細胞膜上のCD59に吸着させることによりCD59の運動を一粒子追跡法を用いて観察した.細胞膜上の粒子はせん断応力負荷前にはブラウン運動を行っており,せん断応力負荷後にはブラウン運動を伴い下流方向に移動し最終的には下流端に局在化する様子が観察された.粒子の運動はその速度にばらつきがあり,運動の様子も運動中に一度停止しその後また動き出すなど様々な動きを示した.本研究において,内皮細胞の細胞膜上の膜タンパクはせん断応力の影響を受け下流側に局在化した.このことは,内皮細胞が流れの方向などを感知するメカニズムに何らかの関与があるのではと考えられた.
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