研究概要 |
本年度は埋込素子自体に自動温度制御機構を持った複合型発熱体を製作し,その加温特性ならびに自動温度制御に関わる磁気的特性について検討を行った。その後素子を複数本とした場合について,その加温領械の拡大について検討を行い、視覚的有意性のある卵白を用いた加温実験でその効果を確認した。 具体的には加温素子を構成する磁性体は断面積1×1mm^2,長さ10mmのものを用いた.複合型発熱体としての結果は,到達温度がキュリー温度の、90℃で制御されており,十分な温度上昇を示している事がわかった.続いて,複合型発熱素子の励磁周波数,磁束密度に対する特性について検討を行った.複合型発熱素子の性能は励磁周波数及び磁性体に鎖交する磁束密度に依存しており,励磁周波数、磁束密度を上昇させることで温度特性が良好になることがわかる.卵白中に素子を配置し,卵白が凝固する様子を擬似生体の例とする検討を行った.卵白はおよそ58℃から白変し,80℃で完全に凝固した.発熱素子の周囲に楕円状で長軸方向12mm,短軸方向7mmの範囲において卵白が白色に変化する領域が得られた.これらにより,基礎的な発熱機構を本製作素子が有しているものとわかった.また,埋込素子の検討として,発熱素子の形状変化について,磁性体の断面積をそれぞれ変化させた場合の温度特性を取得した.素子体積(断面積)に対する温度特性をみると,温度特性は素子体積が大きいほど高い傾向を示しているものの,その傾向として素子断面積が増加するにつれ飽和傾向を示している.素子体積を変化させた場合に温度特性が変化する要因としては,それぞれの素子において磁性体に集中する磁束量の差異が考えられ,磁束量は磁場の鎖交断面積および体積変化に伴う実効透磁率に比例するものと推定でき,この差異により素子構成要素である銅環に誘起される短絡電流に差異が生じているものと考えられることがわかった.
|