研究概要 |
本年度は生体の音響特性を捉えるため,超音波パルスの伝搬解析を時間領域差分法を用いてシミュレーションを行った。まず並列演算音波伝搬プログラムを作製するために,申請器である並列演算コンピュータシステム(PCクラスタ)を安価な部品を用いて自作して,市販品に比べ非常に安価なシステムを構築した.その演算システムの性能を測り,その有効性を示し学会で報告した.そしくそのPCクラスタを使用して水中・空気中の音波伝搬解析を行い,正確で正しい結果を得られるようになった.この手法を導入する事により正確な生体内での音波伝搬プログラムが開発できると言える。また本研究は生体への安全でクリーンな手法である超音波診断の確立を目的としているが,これに対し,昨今では超音波による生体内部の温度上昇の懸念が取り沙汰されており,超音波の生体内温度上昇の検討も併せて行った.前述のPCクラスタで解析を行い従来以上の高い精度で温度上昇が推定できるか検討した。また同時に検証実験を行った. 以下に本年度の成果をまとめる. 1、並列演算アルゴリズムを作成して高速化を図り,8台のPCクラスタで約5.6倍の性能向上を確認した。さらに多くのPCを用いることで更なる高速化が期待できる。 2、超音波による生体内の温度上昇の基礎的検討として,並列演算システムによる解析,検証実験を行い,超音波強度1.2W/cm^2以下であれば温度上昇が安全値に収まることを確認した. これらの結果については、日本音響学会や海洋音響学会,世界超音波会議(World Congress on Ultrasonic),日本応用物理学会で報告した。また来年度の医学と生物学に関するアジア超音波会議(AFUSMB)でも報告予定である。
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