研究概要 |
低侵襲医療機器と生体組織との摩擦制御を目的として,変動磁場による振動を利用した摩擦低減のモデル実験を試みた.永久磁石による回転磁場を用いることで物体に機械的振動を与え,接触する二物体の動摩擦を低減させる実験を行い,パラメータを変化させてその摩擦特性を調べた.その結果,振動の効果により,無振動時に比較して二面間の摩擦は20%程度まで減少することが確認された.また,生体を模擬した粘生流体上,および,実際の生体組織を用いた実験においても,先の実験と同様に摩擦抵抗力の有意な減少を確認することができた.さらに,摩擦を減少させるのとは逆に,みかけの表面摩擦力を増大させることにも成功した. また,物体表面の位置を非接触で計測する必要性が出たことから,この技術を拡張し,磁場センサによる体内での医用機器の位置計測技術の開発を新たに行った.本システムは,体内医用機器先端部に搭載した永久磁石の位置・姿勢を,複数個の磁場センサにより検出するシステムである.その結果,計測領域内での位置の平均誤差は1.9mmであった.誤差の分布から,磁石の位置がセンサから遠くなると誤差が大きくなったが,磁石の位置がセンサに近い領域では誤差が1mm以内と良好な結果を得た.また,センサの配置が結果に影響を及ぼすことも分かった.今後はセンサの感度領域と測定範囲を最適化する必要があるが,1mm付近の誤差で精度良く位置計測が出来る可能性が示された.
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