脳卒中後の片麻痺改善における皮質脊髄路機能を解析する目的で、脳卒中患者にMRI拡散テンソル技法による皮質脊髄路の障害度の定量的評価を行い、片麻痺の程度と比較検討した。 平成15年度には脳卒中慢性期患者に対してMRIによる3-dimensional axonal contrast(3-DAC)、fractional anisotropy(FA)、apparent diffusion coefficient(ADC)による皮質脊髄路の障害度を評価した。この結果、慢性期脳卒中患者では皮質脊髄路のワーラー変性を大脳脚における3-DAC、FA、ADCにより信号変化として捕らえることが可能であった。統計学的な解析では、片麻痺と良好な相関関係を示したものはADC値であった。すなわち、慢性における片麻痺の程度は、ADC値による評価が可能であることが示唆されたので、この評価がどこまで急性期に適応可能であるかを平成16年度の検討項目とした。 この目的のため、脳卒中急性期病院である広南病院で脳卒中急性期患者にMRIを施行し、ADCによる皮質脊髄路の障害度の定量的データーの収集を行った。大脳脚におけるADC値の変化は重度の麻痺症例では発症後2週間後から、中等度および軽度の患者では発症後4週間より認められる事が判明した。このため、発症後早期の麻痺回復は大脳脚におけるADC値では予測が困難であると考えられた。そこで、新たに電気生理学的手法で皮質脊髄路のワーラー変性と麻痺の回復予測を行う事を目的に脳磁図を用いた体性感覚誘発磁界の測定を脳内出血の超急性期患者において施行した。その結果、超急性期患者において麻痺側の体性感覚誘発磁界が得られるものは1ヶ月後に片麻痺が回復する事、および皮質脊髄路におけるADC値の変化が少なく、ワーラー変性をきたさない事が判明した。
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