視覚障害者を対象としたインタビュー調査より、現状の音環境デザインの問題点、特に、視覚障害者のためという名目で設置された音の問題点を類型化したところ、次の6種類に分類されることが明らかとなった。(1)音が小さすぎるため聞こえない、(2)音が反響しすぎるため音の定位が定まらない、(3)近くに似た音が存在しているためどれが目的の音なのか判断できない、(4)不適切な放送内容である、(5)不適切な場所やタイミングで音が鳴る、(6)設置された音についての情報提供の不足のため、設置された音が何を意味するものであるのかわからない。 また、視覚障害者が考える、役に立たない、もしくは、使いづらい視覚障害者のための音が世の中に設置され続ける理由は、次の3種類に分類されることが明らかとなった。(A)必要性評価の不備、(B)当事者の技術についての知識不足、(C)政治/力関係の問題(当事者/設置者間の関係性の問題、及び、当事者間内の関係性の問題)。 このように、現状の視覚障害者を取り巻く音環境デザインの問題は、単に音響学的(技術的)な問題であるのではなく、社会的な問題をも孕んでいる。それゆえ、デザインの際には単に技術的な問題のみを考慮するのではなく、社会的な問題まで考慮する必要がある。 さらに、上述の現状の音環境デザインの問題点のうち、(1)音が小さすぎるため聞こえない、という問題について、視覚障害者を対象とした心理実験、印象評価実験を進行中であり、視覚障害者が考える適切なサイン音の音量と環境音との関係性について調査を進めている。
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