研究概要 |
視覚障害者用移動行動プラン支援システムを開発する第一段階として,目的地までの移動経路が幾つか与えられたときに,視覚障害者の意思を反映した移動経路を選択する移動経路選択システムを開発した.以下,流れを説明する. 障害者の支援機器が充実しつつある昨今においても,視覚障害者の約43%は殆ど外出していないという統計データがある.本研究ではその原因が視覚障害者の外出に対する達成感の低さ,すなわち,自己効力感の低さにあると仮定した.自己効力感を向上させるためには,外出(経路選択)に対して視覚障害者の意思を反映させればよい.木下は,意思決定の概念を"決める","決まる","定める"の3つに分類し,"決める(例えば,視覚障害者に意思決定権を与えても,普段外出しない人は経路選択に多大な心理的負担を感じるため自己効力感の向上には結びつかない)"と"決まる(例えば介助者が経路を決定すると視覚障害者は介助者に付いて外出するだけとなり,同様に自己効力感の向上には結びうかない)"の双方の問題点を同時に解決する"定める"モデル(Saatyの階層分析法AHP)が,意思決定の場面で有効であることを指摘した. 本研究で提案した視覚障害者用移動経路選択システムでは,SaatyのAHPを地理情報システムGISの中に組み込み,視覚障害者に無理な心理的負担を与えることなく移動経路を選択し,移動行動に対する達成感を得られるような自己効力感向上型のシステムを開発した.そして,新潟駅近傍の万代シティでデータベースを構築し,システムの動作を検証した. 次の1年では,移動行動プランの次なる段階であるGolledgeのアンカーポイント説をシステム化し,視覚障害者が外出を楽しく行える移動行動プラン支援システムに拡張化する.具体的な方法としては,木下-中西のAHPの支配代替案法をGISの中に組み込むことを考えている.
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