本研究は、in vitro(トリ胸筋初代培養細胞)とin vivo(ラット)の両面から、伸張刺激による筋肥大に関与する細胞内情報伝達系を解明することを目的としている。 昨年度は、まず筋管細胞に伸張刺激を加えるシステムを確立した。また、IGF-1による筋肥大で活性化することが既にわかっているPI3K→Akt経路が、トリ胸筋筋管細胞やラットの除神経萎縮ヒラメ筋に伸張刺激を加えると活性化することを確認した。 今年度は、新たに以下のようなことがわかった。 1、トリ胸筋初代培養細胞を伸張可能なシリコン膜上に培養し、3日間伸張刺激を加えると、筋管細胞は肥大した。 2、筋管細胞に伸張刺激を加えると、伸張時間5分と60分ごろにピークをもってAktが活性化することがわかった。 3、PI3Kの阻害薬やAktの下流で活性化するmTORの阻害薬の投与で、伸張刺激による筋管細胞肥大が阻害された。伸張刺激による筋管細胞の肥大は、PI3K→Akt経路を介して起こることが示唆された。 4、ラットの除神経萎縮ヒラメ筋に伸張刺激を加えると、Aktやその下流のS6Kが活性化することを確認した。前年度伸張刺激を加えるとヒラメ筋の萎縮が抑制されることを示したので、伸張刺激を加える際にPI3K→Akt経路の薬理的阻害実験を行い、伸張刺激による萎縮抑制効果が阻害されるかどうかを検討する予定で現在準備中である。 本研究では、伸張刺激よる筋管細胞肥大にPI3K→Akt経路が関与していることがわかった。ただ、伸張刺激の筋肥大に関する受容体にも着手する予定だったが、至らなかった。最適伸張刺激条件の検討とともに、今後の課題となる。
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