本研究は、認知・行動障害を主症状とする脳外傷リハビリテーションの介入指針の分析を行い、脳外傷者とその受け皿となる地域社会の双方への介入について、以下の3点を明らかにする事を目的として計画した。 (1)先行研究の内容を分析し、臨床で得られた知識がどのように蓄積されているのかを明らかにする。 (2)認知・行動障害を伴う在宅脳外傷者の社会適応に関する実態調査を行い、再獲得された技能を維持するための支援の糸口をみいだす。 (3)脳外傷の社会性を含めた長期ケアに関する成果測定の一つであるMayo Portland Adaptability Inventoryの有用性を明らかにする。 3ヶ年計画の本研究に際し、1年目である本年度は、以下の2点についてデータを解析中である。 (1)社会資源が整備されている脳外傷リハビリテーション先進国の先行研究の成果を取り上げる際に、社会背景を考慮に入れず社会資源が整備されていない日本へそのまま導入する事は困難であることが予測されるので、わが国における研究論文に焦点を当てたもの、脳外傷リハビリテーション先進国で公表された研究論文に焦点を当てたものを区別して、内容の分析を行い、カテゴリー化し、新たな社会資源を整備する必要のある領域が存在するかどうかを明確にする事を目的としている。 (2)脳外傷の長期ケアに関する成果指標として米国で用いられているMayo Portland Adaptability Inventoryの日本での有用性を明らかにする。この評価は社会参加状況を評価する項目を含むため、日米の社会的な背景を踏まえデータ解析する事を目的としている。 (1)に対して、新たな社会資源を整備する必要のある領域について、当事者とその家族が主導で行っている自助グループでの支援を通して、(1)の結果を反映した地域での実際的な支援活動を展開中であり、先行研究に並行して、介入指針の分析を行っている段階である。
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