研究概要 |
【目的】脳卒中後にしばしば認める対側小脳血流低下(crossed cerebellar diaschisis以下CCD)は皮質橋小脳路による遠隔効果と考えられているが、従来のSPECTの関心領域(以下ROI)設定の不正確さもあり大規模な検討はほとんどない。近年3-dimensional stereotactic ROI templete(以下3DSRT)により個々の脳SPECTデータを標準脳のROIに当てはめる半定量的脳血流測定が、また3次元脳血流統計解析法(以下eZIS)により標準データとの比較が可能となった。この3DSRTとeZISを用いCCDと他部位の連携を、またCCDの有無で認知機能に差異があるか統計学的検討を行った。 【対象】H3年5月〜H15年12月までに発症した初発のMCA脳梗塞、視床・被殻出血患者86名(男性60,女性36名)、平均年齢62±9.4歳。 【方法】発症半年以内(平均65.1±38.7日)に^<99m>Tc-ECD SPECTを施行。3DSRTでΔ(%)=100×(影響側血流-非影響側血流)/非影響側血流が-10%以下かつeZISで2SD以下の血流低下がある場合を有意な血流低下とし、CCDの頻度や程度、他部位との関連を調べた。またCCDの有無とMMSE, Kohs IQ得点との関係について統計学的に分析した。 【結果】MCA梗塞、被殻出血では病変が大きいほど有意にCCDの出現頻度が高かったが、視床出血では有意差はなかった。CCDがある場合、病巣側の前頭葉、中・下前頭回、中心前・後回、被殻・淡蒼球、視床、角回の血流が有意に低下した。CCDの有無とMMSE, Kohs IQ得点に有意差は認められなかった。 【考察】病変が大きいほどCCDの発生率は高いとされている。今回視床出血ではその傾向を認めなかったが今後更に検討する余地がある。CCD有り群で皮質橋小脳路にほぼ一致する血流低下を認めた他、角回にも関連性が示唆された。認知機能とCCDの関係にはより詳細な検討が必要である。
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