【目的】大脳深部領域に限局する脳卒中でも認知機能が低下することは日常よく認められる。この原因の一つに遠隔効果による大脳皮質血流低下が挙げられる。しかし、実際どの部位がどの程度血流低下すると症状が出現するのかは、よくわかっていない。我々は大脳深部限局脳卒中患者の大脳皮質血流と認知機能について検討した。 【対象】初発の大脳深部領域に限局した脳出血60名、脳梗塞59名(平均66.4歳)。 【方法】慢性期に^<99m>Tc ECD SPECTにてeZis解析・3DSRT(3-dimensional stereotactic ROI templete)解析を行った。認知検査としてMMSE(Mini Mental State Examination)・Kohs IQを施行した。各部位の脳血流と認知検査の結果の関係について統計的考察を行った。血流低下は3DSRTにてΔ(%)=100×(影響側血流-非影響側血流)/非影響側血流にて表した。 【結果】MMSEでは、損傷左右側に関わらず痴呆群と正常範囲群で各部血流に差はなかった。血流に依存されにくい検査といえる可能性がある。Kohs IQが70未満かつ右脳損傷の場合は著明な血流低下を認めた。MMSEとKohs IQは相関するものの右脳損傷ではその傾向は弱い。同じIQ得点であっても右脳損傷と左脳損傷では意味が異なる可能性がある。 【考察】脳血流と機能の関連性については慢性期においては低いとされる報告もあるが、今回は慢性期においても局所血流低下と認知機能の関連性が示唆された。機能局在評価とともにその機能を発揮するのに必要な血流の評価も重要な課題であると考える。近年開発されたeZis解析・3DSRT解析は手動ROI設定と異なり主観的biasを減じたより詳細な評価が可能であり、局所血流測定に有用と思われた。
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