高齢者にとって姿勢を保つことは、重要な運動機能である。近年、高齢者の運動が盛んにおこなわれるようになった。中でも水中におけるエクササイズは温泉文化のある我が国にとって浸し未のある運動種目となりうる。すなわち、水中環境(弱重力場環境)は、高齢者の骨格筋へのトレーニングとしての運動環境として応用利用が始まりつつある。循環器系に与える影響を強調されているが、異なる環境での歩行運動は神経生理学的な反映を与える作業仮設を持っていた。現在様々な運動様式が実践の場で取り入られているが、神経-筋システムへの影響を検討した研究はすくない。そこで、本研究では、水中運動を通して、骨格筋活動の変容と脊髄における反射機構への影響について調べた。水中運動の中でも歩行運動・動作について、1G環境下との比較を行った。さらに、脊髄運動ニューロンプールにおけるH反射のゲインについて調べた。水中環境における二足歩行では、前頚骨筋、大腿四頭筋の筋活動が1G環境とは異なる状態を示した。すなわち、歩行パターンの中で、異なる神経制御機構の存在が推測された。また、水中歩行時における脊髄運動ニューロンの興奮性(H反射)は増加した。すなわち、水中運動は、単に水中環境での運動のしやすさだけでなく、日常での運動動作では活動しない神経-筋システムを惹起することが推察された。高齢化に伴う運動機能の低下は、生体の適応過程の一つである。したがって、神経系に日常と異なる刺激をいれることで、運動機能の保持に役立つものと考えられた。
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