水中環境を利用したエクササイズは、近年、高齢者向けの骨格筋への負荷が軽度な運動の一つとして社会的認知を受けている。またその生体への作用を応用利用して、体脂肪燃焼エクササイズとしての期待が高まりつつある。しかし、実際の運動場面では、個体差が大きく基礎代謝、水温、水深などの影響で、その運動効果がどの程度なものなのか十分検討されていないのが現状である。弱重力場の水中環境において日常生活でほとんど使わない、骨格筋に負担をかけても、日常生活上の運動機能を改善しているとは言いがたいことが指摘されている。そこで、本研究では従来の水中運動に簡単な運動負荷装具を併用することで、体脂肪燃焼エクササイズ(代謝機能改善)として確立することを第一の目的としている。したがって、軍手や手中下駄を補助的に装着して、運動機能が衰えてきている高齢者にも基礎代謝を上げ、生体負担が少なくなる水中環境の利用方法の実証的検討を研究目的とする。さらに、運動動作を特殊環境で行うことによって、近年宇宙医学関係で注目されている、一過性の運動ニューロンの興奮を導き、高齢者の反射機能の維持・改善にかかわるプログラムを作成・評価する目的も併せ持っている。 5名の被験者は、1ヶ月から3ヶ月間において、約4時間/週の頻度での水中環境におけるエクササイズを行った後、日常生活上必須と思われる動作が改善しているか検討した。高齢被験者の脊髄運動ニューロンの興奮性(反射ゲイン)を測定した。反射ゲインを測定・評価することで、下肢筋の神経-筋活動への影響を検討した。 下肢の骨格筋機能は、主にニューラルな部分において、活動が増加した。実際に筋肥大の発現するレベルではなかった。
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