研究概要 |
廃用性萎縮筋のモデルである後肢懸垂を行う前の運動療法が筋萎縮に対して予防効果があるのかを検討した.Wistar系雄ラットを用い,後肢懸垂による筋萎縮群(HS),後肢懸垂前に運動を行う群(Ex-HS)および対照群(CONT)について,ヒラメ筋の収縮張力,筋組織内の筋原線維タンパク質含有量,筋組織のミオシン重鎖(MHC)組成,毛細血管構造などの解析を行った.HSおよびEx-HSではMorey法により非侵襲的に後肢を2週間懸垂し,筋萎縮を作成した.Ex-HSは後肢懸垂直前にトレッドミル走行(20m/min,20°傾斜,20min)を行った.後肢懸垂前運動の効果,1)筋張力;Twitch tensionはCONT(163±23 g/g muscle)と比較して,HS(89%)とEx-HS(86%)の間では変化を認めず,共に減少を示した(p<0.05).しかし,Tetanus tensionではHSの578±31 g/massと比較して,Ex-HSは+23%の高値を示した(p<0.05).2)筋原線維タンパク質量;HSでは72.4±8.4 mg/g muscleに対して,Ex-HSは+52%と有意に高値を示した(p<0.05).3)MHC ; CONTではMHC slow type Iが88.9%であったのに対して,HSではMHC slow type Iが81.7%で有意な減少を示したが,Ex-HSでは84.8%となり,HSに比較して高値を示した.4)微小循環・毛細血管構造;廃用性筋萎縮により毛細血管密度は有意な低下を示し,内径が有意に縮小,吻合毛細血管数も有意に減少していることが観察された.しかし,Ex-HSにおいては,HSと比較して有意に毛細血管密度が高く,内径および吻合毛細血管数も有意に高いことが観察された.毛細血管の蛇行性も温存されていることが,共焦点レーザー顕微鏡像より確認された.これらの結果から,後肢懸垂前の運動により廃用性萎縮の進行を予防できたことが示唆された.
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