本研究は、点字使用者を対象として、点字パターン識別時におけるパフォーマンスと大脳皮質活動の関係を脳磁界計測法により検討し、高度視覚障害者における代償機能発現プロセスを明らかにすることを目的としている。初年度である平成15年度は、誘発脳磁界測定に最適な点字パターン提示システムを開発した。 システムは、(1)点字ディスプレー用のバイモルフ型ピエゾ素子による点字セルを4個連結し、プラスチックケースにマウントした刺激提示部、(2)点字セルに電源を供給する機能と点字セルおよび脳磁計への制御信号を生成する機能を併せ持つ電源・制御ユニット、(3)電源・制御ユニットを制御するプログラムを動作させるパーソナルコンピュータ(PC)によって構成した。脳磁界計測では、電流や磁性体の振動による変動磁場ノイズの混入防止が極めて重要な課題となるため、磁気センサーの近傍に配置する必要のある刺激提示部は可能な限り非磁性体によって構成した。さらに、ノイズ混入のおそれのある電源部・制御ユニットは脳磁界計測装置の外に設置し、刺激提示部との接続はシールドされたツイストペアケーブルによって行うこととした。電源・制御ユニットとPCとの接続には汎用シリアルポート(RS232C)を用いた。点字セルの動作と、それに伴う脳磁計へのタイミング制御はPC上の専用ソフトウェアで行うこととした。 今回開発した刺激装置を用い、平成16・17年度は点字使用者を対象とした脳磁界計測実験を段階的に実施する予定である。
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