研究概要 |
本研究は、点字使用者を対象として、点字パターン識別時におけるパフォーマンスと大脳皮質活動の関係を明らかにすることを最終目標としており、初年度(平成15年度)は、誘発脳磁界測定に最適な点字パターン提示システムを開発した。 本年度は、(1)本装置を用いて得られる体性感覚(触覚)誘発活動の基本的性質を明らかにすること、(2)それを得るために至適な刺激提示条件およびデータ記録条件を決定すること、を目的とした実験研究を行った。 被験者10名(うち、点字使用者2名)を対象として、点字パターン提示装置による触覚刺激を左右示指に与え、国際10-20に基づく頭皮上13カ所からの脳波信号を記録し、この信号を自作ソフトウェアによって加算平均することにより体性感覚誘発電位波形を求めた。刺激提示時間2種類(500,1000ms)、刺激提示間隔2種類(1000,2000ms)、提示パターン3種類(2,4,6点刺激)の条件を設定し、各条件下における誘発信号の出現状態と再現性について検討した。その結果、(a)触覚パターン刺激による体性感覚誘発電位は、刺激提示後約50msの陽性ピーク(P50)に始まる複数のピークを持つこと、(b)各成分の頭皮上分布では、P50が明確な対側感覚野優位性を持つのに対し、それ以降の成分はほぼ全頭から検出しうること。(c)各ピークを明瞭に検出するためには約100回以上の加算回数が必要なこと。(d)P50成分の振幅値は、刺激強度(点字パターンを構成するピン数)に依存すること、等が明らかとなった。 今回得られた触覚パターンによる誘発反応の基本的特性をふまえ、平成17年度はパターン識別課題遂行に伴う脳活動信号の抽出を試みる予定である。
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