本年度は、(1)アイソメトリックによるスクワット運動とドロップジャンプ運動の繰り返しが、膝伸展筋群の腱組織の特性に及ぼす一過性の影響を検討し、(2)アイソメトリックによるスクワットトレーニングが膝伸展筋群の腱組織特性およびジャンプパフォーマンスに及ぼす影響を検討した。実験(1)では、8名の被検者に2種類の運動課題を行わせ、その前後で膝伸展筋群の腱組織の特性を測定した。運動課題は、アイソメトリックによるスクワット運動を最大努力で10秒間を50回(SQ)と高さ60cmの台から飛び降りて直ちに最大努力のジャンプをするドロップジャンプを100回(DJ)であった。運動後の最大筋力の低下、筋痛の程度に両課題間で有意な差は認められなかった。しかし、DJ後には腱の特性に有意な変化が認められなかったが、SQ後には腱ステイッフネスが有意に低下した。この結果は、瞬間的に大きな負荷のかかる運動様式よりも一定時間に負荷が持続的に課せられる運動様式の方が腱組織の特性に及ぼす影響が大きいことが示された。実験(2)では、上記のSQの結果を踏まえて、長期的なトレーニングの影響を検討した。8名の被検者に、実験(1)のSQ条件と同様な運動様式で、70%MVCで15秒間を10セット、4回/週の頻度で12週間行わせた。その前後で膝伸展筋群の腱組織の特性および反動の有無による2種類のジャンプパフオーマンス(SJとCMJ)を測定した。トレーニング後の膝伸展最大筋力および筋体積は有意に増加し、膝伸展筋群の腱組織ステイッフネスも有意に増加した。さらに、SJは有意に増加したもののCMJは有意な変化を示さず、反動にいる増加率が有意に低下した。この結果は、アイソメトックトレーニングは腱組織のステイッフネスを増加させ、そのために反動を伴うような「伸張-短縮サイクル運動」のパフォーマンスを低下させる可能性が示唆された。
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