近年、血流を制限した状態での低負荷の筋力トレーニングが、高負荷を用いた通常のトレーニングと同程度の筋力の増大および筋肥大がみられる事が報告されている(Takaradaら2000)。しかしながら、筋力増加に見合った腱特性の変化が伴わなければ、障害を引き起こす事が予想される。本研究では9名の被検者に、等張性膝伸展運動による血流制限下での低負荷筋力トレーニング(LLO:20%1RM)と通常の高負荷筋力トレーニング(HL:80%1RM)を12週間実施させた。このトレーニングプロトコールは、筋力および筋量の増加の程度がほぼ同程度である事が先行研究により確認されている(Takaradaら2000)。従って、本研究では「筋」には同程度のトレーニングメニューが、異なるMechanical stressにより「腱」にいかなる効果がもたらされるかを検討した。12週間のトレーニングの結果、筋体積の増加率はどちらのトレーニング脚ともに7%前後の増加がみられたものの、両トレーニング脚間に有意な差は認められなかった。同様に、最大筋力についても、HL脚(17%)がLLO脚(8%)よりも増加率が高い傾向であったが、両トレーニング脚間に有意な差は認められなかった。しかし、腱組織のステイッフネスは、HL脚では有意に増加したものの、LLO脚では有意な変化は認められなかった。つまり、Mechanical stressの高かったHL脚についてのみ腱組織の特性が変化を示し、Mechanical stressの低いLLO脚では腱組織に有意な変化をもたらすに至らなかった。以上の結果より、腱組織にはMechanical stressのみが関与している可能性が示唆された。しかし、ヒト生体であるため、腱の破断強度から障害との関連を検討する事はできなかった。
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