研究概要 |
本研究は、シルムと呼ばれる朝鮮相撲を通して、朝鮮・韓国においていわゆる伝統文化、民俗文化と称されている事象が、いかなる過程を通して形作られ変容されていったかを明らかにし、それに現れる民族、国家というパラダイムを考察することにその目的がある。 15年度は日本国内で資料収集を行うと共に、韓国の大学、図書館などを訪れ、朝鮮・韓国語の文献や資料を入手した。主な資料収集の対象としては、植民地時代に発行された朝鮮・韓国語による新聞記事、朝鮮総督府によって刊行された公文書等である。収集した資料は事例別、年代ごとに整理し分析した。入手した資料とそれによる今までの研究成果は必ずしも満足できるものではないものの、植民地時代の朝鮮において朝鮮各地でシルム大会が行われ、その主催側となった新聞社によるシルムの普及活動やその活動方針におけるナショナリズムの影響などが確認され、貴重な第一資料となった。 朝鮮の伝統社会において年中行事の中で行われていた一遊戯であった朝鮮相撲は、植民地時代の問に大きな変化をもたされたことを確認できた。今年度はこのような研究成果をもとにさらに視野を広げ、独立後、近代国民国家を形成する中で,シルムが韓国を代表する伝統スポーツとして位置づけられ、幅広く国民的な人気を博していく過程を、資料の収集分析を通して見ていきたい。
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