研究概要 |
習慣的な高炭水化物食摂取が,疲労困憊運動後のLipopolysaccharide(LPS)投与によるtumor necrosis factor (TNF)-α産生抑制にどのような影響を与えるかについて検討を行った. Fischer344系雌ラット(7適齢,n=24)は,高炭水化物食+運動(CHO+Ex)群,高炭水化物食+安静(CHO+R)群,標準食+運動(CON+Ex)群,標準食+安静(CON+R)群に分け,一週間食餌の介入を行った.介入中の摂餌量は等しくなるよう,CON+R群の摂餌量をもとに調整した.実験当日CHO+Ex群とCON+Ex群にはトレッドミル走を適度漸増法にて疲労困憊に達するまで負荷し,CHO+R群とCON+R群は安静を保持し,負荷終了後麻酔下を羊て腸骨静脈よりLPS (1mg/kg体重)を投与した.採血は負荷終了直後とLPS投与1時間後に行い,血漿コルチコステロン,TNF-α,グルコース濃度の測定を行った. 急性運動前・中の炭水化物投与は,運動後の免疫能低下を抑制することが報告されていることから,習慣的な高炭水化物食摂取が,疲労困憊運動後のLPS投与によるTNF-α産生抑制を軽減する可能性が考えられた.しかしながら,一週間の高炭水化物食摂取の影響は観察されず,標準食と同様,疲労困憊運動により血漿コルチコステロン濃度は増加し,運動後のLPS投与によるTNF-α産生は抑制された.血漿グルコース濃度は一週間の高炭水化物食摂取により増加したが,疲労困憊運動後のグルコース濃度には影響しなかった.また,疲労困憊に達するまでの運動時間においても,食餌組成の差違は観察されなかった. 以上のことから,習慣的な高炭水化物食摂取は安静空腹時の血漿グルコース濃度を増加させるが,運動時間の延長や疲労困憊運動後のLPS投与によるTNF-α産生抑制には影響しないことが明かとなった.
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