研究概要 |
習慣的な食餌の違いが,疲労困憊運動後のLipopolysaccharide (LPS)投与後の自発運動量におよぼす影響について検討を行った. F344系雌ラットは個別ケージで飼育し,予備飼育中,小動物用トレッドミルを用いて走行学習(15%傾斜,速度15m/分,15分間)を行った.予備飼育後,高炭水化物食(CHO)+LPS投与群,CHO+PBS投与群,標準食(NOR)+LPS投与群,NOR+PBS投与群の4群に分け,回転ケージ内で飼育し,1週間食餌介入を行った.CHO群の摂餌量はNOR群と等しくなるよう調節した.食餌中の炭水化物が重量あたりのエネルギー量に占める割合は,CHOは85%,NORは75.6%であった.食餌介入1週間後,全てのラットは,小動物用トレッドミルを用いて,15%傾斜,速度漸増法にて疲労困憊に達するまで走行運動を実施した.運動終了直後,麻酔下にてLPS(1mg/kg)あるいはPBSを腸骨静脈より投与した.その後10日間回転ケージ内で飼育し,この間いずれの群も標準食を自由摂取させた. その結果,回転ケージ飼育開始より自発活動量は増加した.その増加パターンに食餌の違いはみられなかった.疲労困憊運動後の自発運動量が運動前と同等の運動量になるまでの回復パターンについて,LPS投与群はPBS群と比較して回復が遅れる傾向がみられたが,有意ではなかった.また,この回復パターンは疲労困憊運動前の食餌の違いに影響されることはなかった.これは,疲労困憊運動後のLPS投与によるTNF-α産生能は食餌の違いにかかわらず同様に抑制されたことや,疲労困憊運動後の血漿コルチコステロン濃度にNOR群とCHO群間の有意な差は見られなかったことが影響していると考えられる. 以上のことから,疲労困憊運動前1週間の高炭水化物食摂取は,LPS投与後の自発運動量には影響しないことが示唆された.
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