研究概要 |
体脂肪の蓄積は,さまざまな疾病につながる要因としてだけではなく,身体を維持していく上での負荷として身体活動に制限を与えていると考えられる.これまでの多くの研究では,「肥満」している人の運動成績は,そうでない人に比べて低い結果が出る種目が多く,「肥満」と「運動成績」の関係は明らかにされてきている.しかし「肥満」することによる運動成績の低下のメカニズムは数量的に明らかにされていないのが現状であった.「肥満」は体脂肪の過剰な蓄積の状態であり,余分な体脂肪はいわゆる負荷加重として身体活動に影響を与えていると考えられる.そこで,本研究者は,「重さ」としての体脂肪の影響を明らかにするため,体脂肪に見立てた負荷を,「仮想体脂肪」として装着する方法を考案した.この「仮想体脂肪法」を用いることによって,筋量を変化させずに体脂肪となりうる負荷加重の増減による運動成績への影響を数量的に明らかにすることができた.しかし,単に運動成績の低下率の数量化だけでは,実際の負荷としての体詣肪の影響を明らかにできたとはいいきれないのが現状である.そこで,本研究課題では,より生体への影響を具体的に明らかにするために負荷加重時の筋への影響を分析することを目的とした.まず,体脂肪分布の状態を具体的にするために,成人男性26名(年齢20.3歳)の体脂肪分布についてインピーダンス法を用いて測定した.その結果,身長169.0cm,体重64.8Kg,体脂肪率18.2%,体脂肪量12.4kg, BMIは22.7であった.各部位の体脂肪率は,右足19.5%,左足19.5%,右腕13.2%,左腕13.3%,体幹部18.4%の分布であった.今後,他の年齢層の測定も行い,より「仮想体脂肪」の負荷を分布状態に近いものにする必要がある.また今後,予備実験の結果を経て,負荷加重の筋への影響について定量的に分析を行う.
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