【目的】骨粗鬆症の予防には、思春期より自らの健康に関心を持ち、好ましい生活習慣を身につけ意識的に最大骨塩量(PBM)を高め・維持することが重要である。しかし、近年女子高校生の80%以上がやせ願望をもち、BMIでやせの者が21%と高率である。脂肪細胞ではエストロゲンが合成されるため、特に閉経後女性では体脂肪量の多い者程骨密度が高値である。また脂肪細胞ではレプチンも合成分泌されている。そこで本研究では女子大生を対象に骨密度に及ぼす体脂肪量とエストロゲン、レプチンの影響と腸管Caの吸収について検討した。 【対象と方法】女子大学生58名を対象とし、BIA法による体脂肪率測定(タニタTBF-102)、アキレスA-1000を用いた踵骨骨密度測定を行い、BMIと体脂肪率からやせ・普通・隠れ肥満・肥満に体格を分類した。血中エストラジオール(E2)レプチンはRIA法により測定した。また、ダイレクトシークエンス法を用いてVD-hSIF1領域の多型解析を行なった。 【結果】(1)対象の体格別の頻度はやせ15人(26.3%)、普通肥満23人(39.5%)、隠れ肥満18人(32.2%)、肥満2人(2%)であった。(2)隠れ肥満群ではやせ群、普通群に比し、踵骨骨密度、及びレプチン濃度は有意に高く、逆にE2濃度は有意に低かった。(3)VD-hSIF1領域の多型はWT型15人(17.6%)、MT型(30.5%)、ヘテロ型(51.9%)であった。(4)hVD-SIF1多型別に踵骨骨密度を比較するとやせ群、普通群ではWT型>ヘテロ型>MT型の順で有意に高かったが、隠れ肥満群と肥満群では差がなかった。また、hVD-SIF1多型別の踵骨骨密度とレプチン濃度の関係は、やせ/MT型群、普通/MT型群では踵骨骨密度とレプチン濃度有意に正の相関を示せいたが、隠れ肥満/MT型群と肥満/MT型群では有意な関連が見られなかった。 【結論】やせ体型、および普通体型の若年成人女性においては腸管からのCa吸収の遺伝的影響を強く受けるが、隠れ肥満の若年成人女性においては、脂肪細胞におけるレプチンが骨密度の維持に寄与していることが示唆された。
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