研究概要 |
非アルコール性脂肪肝(NASH)はアルコール飲用歴がないにもかかわらず、アルコール性肝炎に類似した繊維化を伴う肝組織炎症像を呈する疾患であり、一部の症例では慢性に進行して肝硬変にいたるといわれている。NASHの進行には脂質過酸化やフリーラジカルなどの酸化ストレスを惹起する要因が重要ではないかと考えられている。また、NASH症例では肥満に加えて,糖尿病や高脂血症のような基礎疾患を伴う例が多く、生活習慣病との関連が注目されている。このような疾患においても酸化ストレスは病態の進行に深く関わりを持つことが知られている。したがってNASHの治療には基礎疾患のコントロールや減量が食事療法を基本にした治療が有効と考えられる。本研究ではNASH患者と脂肪肝患者について身体計測や栄養素摂取状況を観察し、栄養評価を行った。今年度は第一にNASH患者の栄養状態,生活活動状況等を把握し,病態に影響する因子の解析をった。岡山県内病院に外来通院中の同意の得られたNASH症例20例,脂肪肝例4例について受診時に採血を行い,病態と酸化ストレスとの関連をみた。 NASHではBMIは平均27.3、体脂肪率34.5%で過体重を認める例が多かった。このうち高脂血症は13例、糖尿病の合併をもつ者が9例であった。食事分析では両群に差は認められなかったものの、摂取エネルギー量、脂肪エネルギー比は適正量を上回っていた。NASH、脂肪肝例とも肥満例が多く、摂取栄養素量もエネルギー等過剰摂取傾向であった。血清TNF-α、IL-6、IL-10濃度において明らかな差異は両群で認められなかった。NASHの栄養療法は脂肪肝同様にエネルギーコントロールを中心とした食事療法が有効と考えられた。次年度は食事療法を基本とした各種治療法別の経過を1年間観察し、血中酸化ストレスマーカーと炎症性サイトカインを指標として観察する予定である。
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