非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の進行において酸化ストレスの関与することが言われている。慢性肝疾患には持続する酸化亢進を抑制することが、病態の進展抑制に重要である。そこで今年度ではNASH患者に抗酸化作用を有するビタミンの強化や食事療法、あるいは効果的な健康教育の検討を行い、肝疾患の栄養管理法について以下の項目を検討した。 1、健康増進機器を利用した運動教室に参加数地域住民への健康教育の実践 対象は40代から80代の健康な地区住民125人とし、運動教室の実施開始時と終了時の2回において身体測定、体力測定、骨密度測定、安静時エネルギー代謝量測定および食事頻度調査・生活活動調査を含む聞き取りアンケートを行った。安静時エネルギー代謝量は、肥満や隠れ肥満の多い60代、70歳以上が最も高値を示した。またいずれの年代においても指導後に明らかな低下は認めず、安静時エネルギー代謝の維持ができていると考えられた。ウオーキングを中心とした運動指導をおこない、自分の現状を把握することが動機付けになると考えられた。 2、NASH患者への食事療法の実践 前年度同調査研究に引き続き、NASH症例、脂肪肝症例について食事調査、身体計測、血液検査項目について1年間の長期観察を行った。NASH症例でほ基礎疾患を考慮したエネルギーコントロールを中心とした栄養指導を行ったところ、体重減少に伴いALTの減少した例が認められた。NASHでは肥満例が多く認められ、栄養療法は脂肪肝同様にエネルギーコントロールを中心とした食事療法が有効と考えられた。また慢性肝炎例へのビタミンE投与における効果を検討したところ、赤血球膜多価不飽和脂肪酸比率の増加が認められ、持続的炎症にともなう膜の酸化抑制の可能性が示唆された(発表論文1)。NASH症例へのビタミンE投与の効果については次年度検討を行う。 3、肥満-肝障害モデルラットを用いた検討 モデルラット作成のための予備実験を行い、肝障害の確認を行った。次年度は各種炎症指標をもちいて抗酸化物質の効果を検討する。
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