研究概要 |
NASHの進行において酸化ストレスの関与が示唆されている。今年度ではNASH患者に抗酸化ビタミンの強化や食事療法の検討および肥満肝障害モデル動物の検討を行った。第1に、NASH患者の食事、身体計測、血液検査等の項目について、分析および結果検討を行った。AST、ALTはビタミンE・C投与群において6ヶ月、12ヵ月で有意に低下が認められた。身体計測値では、BMIや体脂肪率が全群において基準値を上回っており、投与開始群では、ウエスト径が12ヵ月目で有意の低下を示した。摂取エネルギー量も投与群において12ヵ月で有意に低下した。赤血球および血漿中ビタミンE濃度は、投与群において6ヶ月目以降有意に増加した。過酸化脂質濃度は、全観察期間において非投与群が有意の高値を示した。赤血球膜リン脂質脂肪酸組成は、投与群において12ヵ月でパルミチン酸、ステアリン酸が有意に増加した。n-6系PUFA総計、n-3系PUFA総計は、全群において明らかな変化が認められなかったものの、非投与群の低下傾向に比べて、投与群の値は比較的維持されていた。これらのNASH症例における12ヵ月の経過観察結果より、抗酸化ビタミン投与による炎症抑制作用の可能性が示唆された。またNASH患者に対する栄養療法として、抗酸化ビタミンの投与に加え、適切なエネルギー摂取と脂肪摂取制限による体重減少は有効と考えられた。第2に、脂肪性肝炎のモデルとして、db/dbマウスに四塩化炭素200mg/kg体重を単回投与した肥満肝障害モデルを作成し肥満高血糖がもたらす肝障害への影響を調べた。肝障害指標であるAST,ALT、あるいは肝繊維化の指標であるαIプロコラーゲンmRNA発現量は対照に比較して肥満群には有意な差は認められなかった。今年度は短期肝障害モデルで検討したところ、肥満高血糖の肝障害、線維化への明らかな影響は観察されなかった。
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